経済・政治・国際

今だから言える会社のこと

こさっぺは会社でも浮きまくっていた。

金融機関本部の女の子たちはかわいいお嬢様たちばかりで、
彼女たちが、付き合う男性の条件に、
「年収一千万以上」
と言ってるのを聞いて、初めはギャグだと思っていた。

が、彼女らは本気だった!

そして社員たちは、
「給料が低すぎる」
と口々に言っていた。
どこが!?
手取り20万くらいあって、ボーナスも年二回ついたら超安定階級だよ!

そんな見解の相違もあり、まったくなじめていなかった私は常に体調悪く、
病んで辞めるという、会社に向いてなかった女の子たちと同じルートをたどったのだった。

思えば大学生の時、母親もおばあちゃんも叔母さんも、その時ちょっと付き合った恋人も銀行員だったからって、安直に銀行員を選んだのが間違いだった。
私の血は母系の銀行員だけでない、父系の天才バカボンの血も流れていたのだっ!

それでも会社で出来たことも色々あった。
社内報の表紙絵も描けたし、
チアガールとして踊って全国クラスの社内選手を応援して、日本中南から北まで行けたし、
アナウンサーもどきもやれたし、
かわいい女の子たちにも混じれたし、
チラシ広告用のイラストも描けたし、
会社の歌のオリジナルCDも作れたし、
カメラ撮影もできたし、
社内報記事も取材に行って書けたし、
フォトショやイラレの使い方も教えてもらったし、
大学で学んだ映像編集もできたし、
何より会社内のヒエラルキー、構造を知ることができた。

会社にしてもらえることも、会社のためにできることも、できるとこまでやりきった。

いや、生き残るには、まだやり手はあった。
トップに取り入り、権力を得て駆け上り、さらにやりたいことを実現していく方法だ。

トップは――会長とは孤独な人間なのだと思う。
みんながトップの文句を言う。言いながら本人の前では徹底的にひれ伏す。
そんなのトップは、わかってたんじゃないだろうか。
トップは荒れていて、無理難題を押し付け、喜び組の女子はとっかえひっかえ、仕事に精を出さない時もあり、権力を誇大誇示して歩き回る。
でもみんなはトップの力で、永遠に安定して続くように思えるこの会社の環境があることに心を向けない。
この安心感を与えるために、トップがどれだけの重責を背負い、圧倒的な孤独に耐えて、自分にできる範囲で社員のためを思って、努力しているかは考えようとしない。立場がまったく違うから、理解できないんだ。
社員は、理解できないけど頑張るしかない。陰で公然と文句を言って発散しながら、目の前ではごまをすって寄っていく。
トップが、それを嫌にならない方がおかしい。
だから荒れて、罵声をあびせながらも、みんなのために権力を誇示して歩き、それが無茶苦茶に見えるんだ。まるで一家の大黒柱のお父さんじゃないか。

一度、帝国ホテルで家族連れの会長と会った時は、すごく親身に話をきいてくれた。奥さんもやさしかった。
そして、あたしが撮影で遅くまで残っていた時には、
「あの子体調悪いんやろ、早く帰らせろ」と偉いおじさんたちに命令してくれた。
何だかんだで、私のことも覚えていてくれた。体調が悪いことも知っていてくれた。それは素直に優しいと受け取っていいんじゃないか。

だからこそ――私がつけいる隙もあった。上にのぼろうとするならば。
女だろうと、女だからこそできる方法がある。
実際にそれをやっている怖いお姉さんもいらっしゃる。
権力をかさに活発に活動し、自分の能力を見せつければ上にあがっていけるだろう。そうなれば体調だって治せる。
維新政治塾に入って、市長の後ろ盾も得て、部長になり役員になりトップになって、府市統合に乗り出し、新たな世界を作ってさらなる野望を実現していく… 
とかとか考えるよね。
人間やれば何でもできるからね。

でもそんなことして何になる?
できるけど、それをやることを選択してない人は、社内にもいっぱいいたと思う。(みんな幸せに生きたいもんね)

あたしは、それより早く帰って作品が描きたかった。
それに私の出世は周りの人を傷つける。
特に広告系の人たちは自分に似てたし好きだった。ムカついたけど愛憎的な。

でも決定的な違いがあった。

彼らはここで生きていくことを決断した人間なんだ。

三年ほどで確実に辞める自分が、

彼らの必死に支えているプライドを、その場でへし折ることは人道的に許されない。

それに、あたしがてっぺん目指すべきは、会社でなく物書きの世界だ。

会社にいて一番怖かったのは、出来ないと思い込んでしまうこと。
周りに合わせて、同化することに必死になって、機械人間になって、自分の可能性も野望も夢も忘れ果ててしまうこと。
そしてそうなりかけた。
でも自分の本質の部分が、「違う 違う 違う!」と言い続けてきた。何かが重くのしかかる。
それで2カ月にいっぺん倒れて、会社を休んでいたのかもしれない。
これ以上迷惑をかけてはいけない。そして「自分はここにいるべき人間じゃないんじゃないか」という思いが常にリフレインする。
みんなは「考えすぎだよー」と言ってくれたけども、
果たしてそうなのか? 何か根本的なところが合わない。違う、違いすぎる…!

と、そんなわけで今に至る。
でも会社経験はまじで勉強になった。心からいい経験だった、と言うまでにはあと数年必要だと思うけど、その頃には存分に作品に生かせるようになってるんじゃないかな。
だから忘れないよ、絶対。細かいディティールまで覚えとかないと。
会社の人間として生きて、一度死にました。甦ったらまた、別の会社2、3個は経験したいと思ってる。こんどはもう派遣でいいけど( ^,^ )

ふわふわ浮かんで生きていくから。
まとめると会社とは…… ファンタジー!

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