« 断執~だんしゅう~修業マニア | トップページ | トランス状態(絵を描くの巻) »

がんばれ、男

 こさっぺは最近ルンルン幸せに生活している。

 何かごっつええことがあったわけではなくて、ただいろいろあったわだかまりもフッ飛んで、一段明るいステージに移行した感じ。
 その最後の“わだかまり”が、先週、高山の寺でひいた風邪だった。

 仕事中、こさっぺは悩んでいた。
 熱やダルさが高まり、机で突っ伏しながら、
 なんで風邪ばっかひくんだろう。長引いて治らないし。。元気になろうと思ったけど、ダメなのかなぁ。あたしは不幸な星の下に生まれたんだウワアァン
 と。

 で、帰りし、家から最寄りの、かかりつけの病院に行った。
「また来たの!」
 と、開業医の先生は言った。最近月一で来てるじゃん、と。
 なんでこんなに風邪ひくんですかねぇと訊くと、まあ疲れてるんでしょうね、とアッサリ言われ、
「じゃあ、点滴打っとく?」
 どうする? と訊かれ、お願いします、と力強く言った。

 その日は病院もかなりご盛況――つまり患者が多く、明らかに風邪をひいているらしい人たちが、多く待合いソファに座っていた。

 こさっぺさん~と呼ばれて点滴室に入ると、おっと、今日は先客アリ。
 いつもとは違うベッドで横になって、針を打ってもらう。
 今日の看護婦さんは新顔らしくて、ちょっぴり手間取りながら一生懸命点滴を打ってくれる。液の落とすスピード速めてもいいですか? と訊かれるが、あんまり速くても怖いので、そこそこにしてもらう。
 こさっぺは大人しく本を読んで、ベッドで横になっていた。

 そこへ、点滴室に先生がやってくる。看護婦さんと話をし始めた。
「今日あと○○人来るから。大丈夫? なんかあったら手伝いに来るから、呼んでな」
 と看護婦さんに言い置いて、診察室に戻っていく足音。
 なるほど、今日はやっぱり風邪ひきさんが多いらしい。

 そこへ、点滴室の扉がガラガラ開いて、次の客がやってきた。
 看護婦さんが誘導して、あたしの隣のベッドに座る。
 寝転べばいいのに、「いや、いいです」と制して、座る。声は若い男性のようだ。
「いや、座ったままで。あ、スピードはマックスで。いつもそうなんで」
 とか看護婦さんに言ってる。

 おお、これは紳士。病院の客はけを気遣って、なるべく早く終わらせ、サッと出ようという心掛けなのか。カッコイイではないか。
 と、思っていたら……

 「いや、もっと速くでいけます。ええ、お願いします。針の角度が……いや、こうじゃなくて、こっちの方が速く入るかも。こうかな? この角度が……」
 やけにこだわっている。
 看護婦さんが、優しい子猫のような声で、頑張って応対する。
「あ、こっちですねー。はい、これで入りますかぁ? あ、もっと、こう、こう…… これで早くなりますね~」
「いや、でも、針がね、こうした方が……」
「はい……痛くないですかぁ? こっちの、腕をこうして……」
「あ、でも、ここが……」
 おい、会話がささやき声で、若干エロく聞こえるぞ。
 ていうかお前、看護婦さんに喋って、触ってもらいたいだけだろ!

 こさっぺがうんざり寝ころんでいると、今度は、待合室でもゲェッホゴォッホうるさかったオッサンが入ってきた。
 遠くのベッドから、看護婦さんの細い声と、うるさいほど咳をしまくる大声が、響いてくる。
 これがまた、いやな菌を撒き散らすような、だみ声を張り上げた咳である。
 ていうか、そんな風邪ひいてるんですアピールせんでも、みんな病院来とんねんから風邪ひいとるわ!

 と、隣のお兄さんから、か細い声が上がった。
「すいません~」また看護婦さんを呼ぶ。
「痛いんですけど」
「あっ、また針の角度が……スピード速かったですかねえ、」
「いえ、なんか針が上手く……なんとかして、痛い、痛い……」
 とまた問答を始める。
 おいっ! 自分でそうしてって言ったんだろうがっ! 
 イチャモンつけるんやったら、最初から看護婦さんのやりやすいようにさせんかっ! そした何の問題も起こらんわ。 迷惑をかけずに、サッと出ていく、それが紳士っつーもんじゃないのかっ。

 遠くでは、いやな気を撒き散らしていたオッサンの咳声も、いつのまに眠ったのか、静か~になっていた。
 隣のお兄さんは「痛い~……痛い~……」と弱々しく唸っている。

 も~~(怒)
 騒ぐなっ! かまってもらいたい坊やが!
 点滴ぐらい静かに受けられんのかっ!
 針がなんだっ、ちょっと皮膚に刺すだけじゃないかっ。
 血がどうしたっ、そんなもん、穴空けるねんからちょっとぐらい出るわい。
 ただでさえ混んでて大変だっていうのに、看護婦さんの手をわずらわすなっ!
 むしろ気遣いを見せるのが、大人のオトコじゃないのかっ!

 そういえばこないだ、小説講座で、最近の男の傾向について講義があった。
 なんでも、最近のライトノベルのターゲットとなるべき若い男は、
『成長なんてしたくない』、らしい。
 曰く、『自分から何も動かないで、ありのままの子供の自分を、可愛い女の子たちに愛してもらいたい』らしい。
 日本、終わった。死ね!
 と、作家の五代○う先生は言った。全く同感である。
 努力をしろ! 仕事しろ! せめて身なりを整えろっ!
 最近の日本の若者(男)は軟弱になった、というけれど、まさかここまでとは。
 こちとら、人類の未来まで考えて、日夜努力(大げさ)しているというのに、なんでこんな男たちに求められなあかんのだ!
 それにくらべたら、「点滴のスピード、マックスでお願いします」と最初強がった男性の方が、まだマシってもんだ。たとえ最後に「痛いよ~」と泣いていたとしても!
 そうだ、強がることが、男の頑張りなのかもしれない。

 ……ていうか、男性のみんな、もしかして、強がってます? 弱いところは、隠そうとしてる?
 そう考えると、いろいろ思い起こすに、合点のいくことが多い。
 ああ、そういうこと。あの人も、この人も、そっか、あー、はいはいはい……。
 てね。

 男はたぶん、もしかして、弱いのだ。
 だから、男の子は強いのよっ、頑張って! と言わなあかん。
 ケツ叩いてばっかいるのもナンなので、いいことも言っとこう。
 あたし、頑張ってる人が好きよ。無条件で。応援したくなる。だから会社でチアガールもしているのだ。ただ踊りたいだけという説もあるけど。

 だから頑張れ男! 未来の日本を背負うのだ!
 弱いからこそ頑張る。その姿がカッコイイのじゃないか。

 ~~んなこと考えながら、毛布の中でモゾモゾして、待つこと数十分。
 (隣の男性の元には、先生が飛んできて、事なきをえていた)

 ていうか点滴したら、あたし風邪治ったわ。
 なんか、しっかり生きていこう、と思った。
 シャッキリと起き上がって、看護婦さんにお礼を言い、薬を受け取って、こさっぺは病院を後にしたのだった……。

|

« 断執~だんしゅう~修業マニア | トップページ | トランス状態(絵を描くの巻) »

心と体」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/528074/25348144

この記事へのトラックバック一覧です: がんばれ、男:

« 断執~だんしゅう~修業マニア | トップページ | トランス状態(絵を描くの巻) »